04.北海道までの旅 その四。

 

 

 

 

 朝、五時半に目を覚ます。日常の生活をしていたら、考えられない早起きだ。ウグイスがそこらじゅうで鳴いている。まだ練習が足りないのか、鳴き方がたどたどしいやつもいる。あるいは東北なまりなのか。

 ふーすけが起きてこないので、一人で絵日記を描く。ここは廃道寸前の砂利の農道。そう。道の上に堂々とテントを張っているのだ。木立の向こうには、のんびりとした耕作地が見下ろせる。

 

 昨夕のおかずの残りを具にして、炊き込みご飯の朝食。旅で食う飯は何でもうまい。

 

 

 

 

 

 男鹿半島がいい雰囲気だったので、少しツーリング気分で走ってみることにした。日本の正しい田舎の風景。でも時々道路脇に、おかしな看板が立っている。

「民家が揺れるので最徐行」

「変態はくるな」

 ふーすけは嬉々として、その文面を大声で読んだ。

 

 

 

 内陸部から離れて、半島の海沿いを走る。とても素敵なものを発見した。

 難破船だろうか。やや大きめの漁船が座礁していた。僕はこういうものが大好きなので、すぐにバイクを止めて近づいていった。なぜかライフジャケットが二つ落ちている。ふーすけが素早くそれを身につける。どうやらすっかり難破船の乗組員になった気分でいるらしい。

 


 

 北上の旅に戻る。海沿いの国道を走っていくと、ついに青森県に入った。しばらくすると、日本キャニオンという看板が出てきたのでそちらに向かう。アメリカのグランドキャニオンから名前を頂いたようだが、比べるのが恥ずかしくなってしまう代物である。

 

 再び海沿いに下りると、賽の河原というありがちな名前の海岸があった。ツーリングマップにも載っていないようなマイナーな場所ではあったが、風景はとても美しかった。岩の小島や、透き通った海。地蔵堂と、空しく風に回る風車(かざぐるま)…。

 

 

 

 

 海から離れて、真東に進む。世界遺産となった白神山地を走る林道。オフロードバイク乗りには、きっとたまらない魅力的なところだろうと期待する。

 ところがどれだけ走っても単なる林の中で、ぜんぜん景色が変わらない。

 

 結局最後まで、同じような単調な景色だけで終わってしまった。

 

 ライダーの僕が言うのもなんだが、バイクに乗ったままで味わえる自然など、たかが知れている。この日本の道路で、圧倒されるほどの自然の美しさに出会えるところなど、僕は数えるくらいしか知らない。本物の自然に出会うためには、歩くことだ。

 きっと歩かなければ、この白神山地の本当の魅力も分からないのだろう。

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