農道の脇、釧路川の土手となった川原が昨晩からのテント地だ。
以前カヌーで釧路川を下ったとき、印象的だった崖が対岸にある。
こちら岸では、遠くで、ばあさんが畑仕事をしている姿がある。のんびりとした朝だ。
昨夜のおかずのジンギスカンを具にしたラーメンを作る。インスタントラーメンは、旅の朝にはとても良い食材となる。
食べる。すごくうまい。下手なラーメン屋なんか、全然比べ物にならないうまさである。
「ラーメン屋をして生きていけるね」
単純なふーすけはご機嫌だ。何かを食べているときはいつも機嫌がいい。
テントを片付けて、川沿いに走る。畑や放牧地が交互に現れる。広々とした草地に、牛がゆったりと散歩したり、寝転んだりしている。
「いいなあ。いいなあ。牛さん、のどかだなあ」
ふーすけのうらやましがり方は尋常ではない。自分も牛になりたいのだろうか。
川沿いから離れて、進路を東へ。道路沿いを、牛が行進している。バイクを止めると、ふーすけは素早く牛たちに近づいていった。
何を考えているのか全然分からないが、ふーすけはじいっと無言で牛を見続けている。牛たちはふーすけの前を通るのが怖いのか、早足で逃げるように通り過ぎていく。
牛たちがかわいそうなので、ふーすけを連れ戻してまた走り出す。
ある意味で北海道らしい、単調な風景の中を走り続け、中標津(なかしべつ)の町へ。熱帯魚屋がつぶれた跡のようなコインランドリーで、洗濯をする。待つ間に絵日記。
洗濯の後は、開陽台(かいようだい)に寄り道してみることにした。広大な風景が330度にわたって展望できることで有名な場所である。
だが新しい展望台が建ってからというもの、少々俗化が進んでいる。
駐車場には、自衛隊のトラックなどが数台あった。自衛隊員が、展望台で遊んでいる姿がある。
ふーすけが、いきなり自衛隊の車に走っていった。何をするかと思ったら、やたらとなで回している。
「なにしてんだ?」
尋ねると、ふーすけは胸を張って答えた。
「私たちの税金で作ってるんだから、触ったっていいじゃない。乗り回したっていいくらい」
なるほど! と納得できるお言葉。でも乗り心地が悪いことは知っているので、触るだけにしておいた。
再び東に向かい、標津(しべつ)の町へ。海沿いに広がる、静かな雰囲気の町だ。北方領土郷土館を見学する。素晴らしい自然の広がる北方領土の写真を見ると、行きたくてうずうずしてくる。
だが日本に返還されたら、自然は壊されないだろうか、と心配になる。なんせ北海道でも、年々開発が進み、本物の自然が減っているからだ。
複雑な思いで郷土館を出ると、子供が三人、駐車場で遊んでいた。僕の姿を見ると、「かっこいい! カッコいい!」と歓声を上げた。おもちゃのカメラで写真を撮られたりして、ライダーもののヒーロー並みの扱いを受ける。
一方、ふーすけにはまったく興味を示さないので、こっちはどうかと指さして聞いてみた。
「そっちは変! へーん!」
子供は正直だ。