15. さらに東へ。

 

 農道の脇、釧路川の土手となった川原が昨晩からのテント地だ。

 以前カヌーで釧路川を下ったとき、印象的だった崖が対岸にある。

 

 こちら岸では、遠くで、ばあさんが畑仕事をしている姿がある。のんびりとした朝だ。

 

 昨夜のおかずのジンギスカンを具にしたラーメンを作る。インスタントラーメンは、旅の朝にはとても良い食材となる。

 食べる。すごくうまい。下手なラーメン屋なんか、全然比べ物にならないうまさである。

 

「ラーメン屋をして生きていけるね」

 

 単純なふーすけはご機嫌だ。何かを食べているときはいつも機嫌がいい。

 

 

 

 

 

 テントを片付けて、川沿いに走る。畑や放牧地が交互に現れる。広々とした草地に、牛がゆったりと散歩したり、寝転んだりしている。

 

「いいなあ。いいなあ。牛さん、のどかだなあ」

 

 ふーすけのうらやましがり方は尋常ではない。自分も牛になりたいのだろうか。

 

 

 川沿いから離れて、進路を東へ。道路沿いを、牛が行進している。バイクを止めると、ふーすけは素早く牛たちに近づいていった。

 

 何を考えているのか全然分からないが、ふーすけはじいっと無言で牛を見続けている。牛たちはふーすけの前を通るのが怖いのか、早足で逃げるように通り過ぎていく。

 

 牛たちがかわいそうなので、ふーすけを連れ戻してまた走り出す。

 

 ある意味で北海道らしい、単調な風景の中を走り続け、中標津(なかしべつ)の町へ。熱帯魚屋がつぶれた跡のようなコインランドリーで、洗濯をする。待つ間に絵日記。

 

 洗濯の後は、開陽台(かいようだい)に寄り道してみることにした。広大な風景が330度にわたって展望できることで有名な場所である。

 だが新しい展望台が建ってからというもの、少々俗化が進んでいる。

 

 

 駐車場には、自衛隊のトラックなどが数台あった。自衛隊員が、展望台で遊んでいる姿がある。

 ふーすけが、いきなり自衛隊の車に走っていった。何をするかと思ったら、やたらとなで回している。

 

「なにしてんだ?」

 尋ねると、ふーすけは胸を張って答えた。

 

「私たちの税金で作ってるんだから、触ったっていいじゃない。乗り回したっていいくらい」

 

 なるほど! と納得できるお言葉。でも乗り心地が悪いことは知っているので、触るだけにしておいた。

 

 

 

 

 再び東に向かい、標津(しべつ)の町へ。海沿いに広がる、静かな雰囲気の町だ。北方領土郷土館を見学する。素晴らしい自然の広がる北方領土の写真を見ると、行きたくてうずうずしてくる。

 だが日本に返還されたら、自然は壊されないだろうか、と心配になる。なんせ北海道でも、年々開発が進み、本物の自然が減っているからだ。  

 

 

 

 

 

 複雑な思いで郷土館を出ると、子供が三人、駐車場で遊んでいた。僕の姿を見ると、「かっこいい! カッコいい!」と歓声を上げた。おもちゃのカメラで写真を撮られたりして、ライダーもののヒーロー並みの扱いを受ける。

 

 一方、ふーすけにはまったく興味を示さないので、こっちはどうかと指さして聞いてみた。

 

「そっちは変! へーん!」

 

 子供は正直だ。

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