ヨーロッパ2005 - 『SASURAIらいふ』 SASURAI life　KATSUO INOUE's　website

EUROPE　2005

山の上は別世界のように広がっている。まさしく雲上の楽園、アルプス。こんな場所にテントを張り、朝を迎えることが、旅の醍醐味である。＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

朝日が岩山を金色に染めた。しかし奥の山はどんよりとした雲に覆われている。今日の天気が気になるとき。晴天でなければ、山歩きはしない。綺麗な風景を見たいから。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

この日までの過去千日を超える旅の中でも、最高に美しく、野生的だったと言っていい場所を振り返る。素晴らしい野宿地を去るときは、感傷に似た気分が生まれる。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

爆発するように湧き上がる雲が、夕日に照らされる。ただただ、感動に打ちひしがれるのみ。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

途轍もないガレ石の堆積。あの稜線を越えれば、新しい景色が広がるのか。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

富士山よりも高い AIGUILLE DU MIDI 展望台3842ｍからの眺め。赤い針峰群と呼ばれる山々。＜シャモニー周辺――フランス＞

朝の光は本当にうれしいものだ。素晴らしい一日を約束してくれるような、清々しいひと時。＜エンゲルバーグ周辺――スイス＞

湧き起こる雲が、岩山を隠しては、また消えていく。どれほどの量の雲がここから生まれ、飛び立っていったのか。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

静かに暮れていく山の上の時間。あたりには他に誰一人いない。寂しさなど感じない。今日一日が幸せであったことを、ゆっくりと思い出す。＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

おとぎ話のような風景。不思議な山 FAULHORN 2686ｍの上に立つのは、ヨーロッパ最古の山岳ホテル。山頂からの眺望も絶景だ。＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

セルリアンブルーの水をたたえる LAC DES LAURES。標高は2545ｍ。このエリアにはいくつもの美しい湖が点在している。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

快晴の空の中で出発準備。でもあまりの天気の良さに、もう一日山にいようかと思う気持ちも。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

まるで他の惑星の光景。不気味さと美しさが同居する、奇妙な空間だ。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

夕日が岩を染め上げる。旅をしていてもここまでの日は滅多にない。永遠と刹那とを感じることのできる、貴重な時間だ。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

素敵な雲はさらに遠くへと、僕を誘ってくれる。雲は自由の象徴だ。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

日本人が一人も見当たらない BURANO のカラフルな民家。静かな時間を過ごせる島。＜ヴェネチア――イタリア＞

一晩を過ごした場所から歩き始める。見知らぬ場所に向かうときの胸の高鳴りが、僕を旅人であり続けさせてくれる。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

命懸けでガレ場を登り、眼下に見た湖。人を寄せ付けない風景とは、こういうことか。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

ワイルドな気分で目覚める朝。こんな場所にテントを張れて、文句を言う男がいるだろうか。＜エンゲルバーグ周辺――スイス＞

不思議な飛行物体みたいな雲。ずっとこの場所に浮かび続けていた。＜シャモニー周辺――フランス＞

夕方に近い時間になると、人気の場所でも人の姿が消える。ドロミテの最も美しい時間が、これから始まるというのに。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

スイスの低地風景は、想像していた以上に綺麗だった。童話の世界の風景がそこにあった。＜ルチェルン周辺――スイス＞

果てしない大陸の広さに憧れて歩き出したが、とても歩いて旅のできる広さではないと実感する。山ならば飽きないが、どこまででも平坦な風景だと、ロマンさえ感じなくなってしまう。＜チェスケ・ブジェヨヴィツェ周辺――チェコ＞

旅の最初は雨が多くて、雨宿りをすることが多かった。濡れて歩くよりも、のんびりと雨が上がるのを待つほうがいい。＜グラフェノート付近――スイス＞

小さな島の猫を抱き上げる。のんびりとした島にふさわしい、おとなしくてゆったりとした猫だった。＜ヴェネチア――イタリア＞

秘密の隠れ家的な野宿地を見つけるのは気分がいい。経験と勘と、何かの導きが、素晴らしい場所を教えてくれる。＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

夜と早朝はかなり冷える。こんなに山ばかり登っている旅になるとは思っていなかった。北海道の夏装備くらいでは、ヨーロッパの山岳地帯は寒すぎる。かじかむ手で、朝食を作る。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

地図を見て進路を確認する。どんな景色が待っているかなど、分からぬ旅。自分がどう歩いていくかも、気分まかせ。そういう旅こそが、本当に面白い。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

荘厳な朝の光は、ため息が出るほどにドラマチックだ。どんどん変化していく岩山の色は、神々の見せるスペクタクル・ショーと言っていいだろう。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

ドキドキする光景。人が想像するどんな景色よりも、地球の景色は美しく、雄大で、不思議だ。＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

チェコの田舎はある意味、とてもヨーロッパらしい風景だ。平坦で、美しく、だが退屈。＜チェスケ・ブジェヨヴィツェ周辺――チェコ＞

エッフェル塔下部の光景。夕日が当たって、少々不気味な色になっている。自動小銃を抱えた兵士達が警備に当たっているが、観光客達は誰も気にせずに歩いていた。＜パリ――フランス＞

天気が良くなるのを待っていたら、三時になってしまった。それでも綺麗な風景を見ながら歩きたくて、出発を決める。日が暮れるまでは四時間くらいある。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

山での食事はこんな感じの夕食。鍋と靴の間にあるのはミルクレーズンパン。体力を使うので、甘いものを体が欲する。山にいる日が長いと、メニューが段々と貧しくなっていく。左はブランデー。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

ここまで綺麗な水ならば飲んでも大丈夫だろうと判断して、飲料水にする。そう、見たとおり、湖から直接流れ出てくる川である。つまり、湖の水をそのまま飲むのと同じ。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

期待したとおりに夕日がトレ・チメを照らす。この時間のためだけに、ここで一日待ったのだ。良い景色を見るための最高の方法は、待つこと。あるいは運のほうが大切だろうか？＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

山がため息をついて、こんな雲が浮かび上がった。そう言ったら、あなたは信じる？＜チェルビーノ周辺――イタリア＞

水場を求めて、じっと地形を観察し、耳を澄ます。ドロミテでは水を手に入れるのが大変だ。僕の感覚は、この下に水が湧いている場所があると告げているが…。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

なんとか見つけたテント地。平地では、山の上よりも野宿に適した場所を見つけるのが難しい。ヨーロッパではテントを張っているところを絶対に人に見られたくない。人が一番危険だから。＜キール郊外――ドイツ＞

赤い針峰群を見上げながら歩けるこのコースは、基点にロープウェイや登山電車の駅があり、行程にもアップダウンが少なくて、ほとんど散歩気分の日帰りコース。＜シャモニー周辺――フランス＞

神秘的な色を見せる湖、LAC D’EN HAUT。上空を雲が流れると、色がたちまち変る。＜モント・エミリウス周辺／アオスタ――イタリア＞

シュールリアリズムの絵画のよう。ローマは古代と現代が共存する街だ。＜ローマ――イタリア＞

岩場の突端に立つのが好き。バランスに自信があるから、これくらいの場所ならば全く恐怖は感じない。＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

世界で一番美しいと言われる広場、GRAND-PLACE の一角。確かに見たときは圧倒された。そういう知識もなく、行き着いたのも偶然ゆえに。＜ブリュッセル――ベルギー＞

ガウディが作った公園、PARK GUELL。メルヘンの世界も、人があふれていては魅力半減。もっとも、一番怪しい人間は、こんなでかい荷物を背負っているやつだが…。＜バルセロナ――スペイン＞

石造りの屋根が、イタリア北西山岳部では普通に見られる。国境を越えたんだと実感できるのは、民家の造りが変わったとき。もはやＥＵ圏の旅では、国境「線」を意識できない。＜シャティロン――イタリア＞

世界が変る瞬間。夜から朝へ。自然の中では、太陽は偉大な光源であり、熱源だ。寒くて震えていた体が、光が当たった途端に温まる。テントは夜露と結露で中も外もびたびた。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

断崖の上のテント地に、朝日が当たる。誰もテントを張りそうにない場所こそが、最高のテント地になることもある。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

スイスと言えば、こんな風景を想像する人が多いだろう。それは正しい！＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

鉄道駅の廃墟地を車窓から見つけて、テント地になりそうだと電車を飛び降りた。ロケーションは素敵だが、誰にも見つからずに明日の朝まで過ごせるかが心配。＜ルートビヒスルスト近郊――ドイツ＞

バルセロナの街を一望できる、美術館？の前庭。都会の旅は、ある種の倦怠感がつきまとう。こんなに大きなザックのせいだろうか…。＜バルセロナ――スペイン＞

憧れていた風景は、こういう風景だった。幼い頃からずっと、いつか行ってみようと思っていた…。＜エンゲルバーグ周辺――スイス＞

キャンプ場での夕食はこんな感じ。パンはそのうち米に変ったが。山に登っている間はサラダなど食べられないので、平地にいるときにたくさん食べておく。＜スイスのキャンプ場にて＞

ヨーロッパアルプスのトレッキングコースを歩くことは、きついことではない。いったん山の上まで登ってしまえば、後はあまりアップダウンのない道を歩けるからだ。日本の登山と違い、開放的だ。＜グリンデルワルト周辺――スイス＞

傾いた塔には誰も登ることができない。小さな島のシンボルとして、密やかに、厳かに、立ち続ける…。＜ヴェネチア――イタリア＞

教会の中は圧倒的に豪華絢爛で、厳粛な気持ちになるよりも、ただ驚くばかり。＜ドッビアーコ――イタリア＞

岩の砦に囲まれた、まっ平らな草原を行く。ああ、大地放浪…＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

広大なる荒涼とした世界には、旅人の血を騒がせる魅力が潜んでいる。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

オーストリアの山は優しい雰囲気がある。緑豊かな、心和ませる風景が迎えてくれる。＜レッヒ周辺――オーストリア＞

パステルカラーのおもちゃの世界に来てしまったよう。「外国に来た」という気持ちになれる。＜チェスケ・ブジェヨヴィツェ――チェコ＞

時間の流れがずっと止まっているような、山上の集落にある教会。＜ブルデンツ郊外――オーストリア＞

ヨーロッパで最も僕が気に入ったエリア、セクステナー・ドロミテのシンボル的存在が右側に写るトレ・チメ・ディ・ラヴァレード。イタリア語で「三つの頂」の意だが、どう見ても四つ、あるいは五つだ。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

ヴェネチアの代表的風景。夕日が当たり、一見のどかだが、世界中の観光客でごったがえしている。これを撮影した橋の上にも、大勢のカメラマンが。ここに「旅」を求めるのはもはや、幻想でしかない。＜ヴェネチア――イタリア＞

鏡となった水面に映る、もう一つの世界。異空間への入口がぽっかりと開いているようだ。＜ローゼンガーテン／ドロミテ――イタリア＞

かのセーヌ川。都会を流れる川らしく、巨大な排水設備にしか見えない。精一杯綺麗に撮るために、逆光で。＜パリ――フランス＞

ヨーロッパの街で一番圧倒されたのが、INNSBRUCK。特にこの大通りの華やかさには、思わず声が。なぜかあせって撮ってしまい、画面が少し右に傾いている。あえて修正せずに。＜インスブルック――オーストリア＞

自分が「異邦人」であることを強く感じる。穏やかな色の町並み、磨り減った石畳、乾いた光…。＜チェスケ・ブジェヨヴィツェ――チェコ＞

大陸を移動する手段として、列車は快適だと言える。けれども一日の大半を費やすような移動を繰り返すと、「これは旅なのだろうか？」と疑問に思うときがある。単に移動することが旅ではない。＜北部を走る列車の中で――ドイツ＞

13世紀に建てられたグリュイエール城の主館。アルプス周辺には、小規模な城がいたるところに見られる。＜グリュイエール――スイス＞

テントの中で飲むアルコールはうまい！　特に長時間歩き続けた末、いい場所にテントが張れたときは、屋根の下で飲む酒なんかとは比べ物にならない。＜チェスケ・ブジェヨヴィツェ周辺――チェコ＞

標識の文字が「ここは外国だよ」と教えてくれている。数字の単位はｋｍなのだろうか？＜チェスケ・ブジェヨヴィツェ郊外――チェコ＞

風車のある景色が、意外にも少なかったオランダ。国中風車でいっぱいだと思っていたのに。＜オッドルプ――オランダ＞

狭い裏路地には、より強く異国の香りが漂っているものだ。＜インスブルック――オーストリア＞

焚火で作る食事は最高においしい。まずは焚火をさっと起こせるようでなければ、旅人を語ってはならぬ。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

金色に輝くトレ・チメ。ここを訪れる人の千人に一人も見られない光景だろう。天に感謝することの、なんと多い旅であったか。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

山頂から龍のような雲が伸びていく。スイス側からは有名なマッターホルン。イタリア側からはまるで印象が違った形をしている。＜チェルビーノ――イタリア＞

鋭い山頂にはずっと雲が掛かったままで、この瞬間を待つためだけに一時間。Aiguille du Dru 3754ｍ。＜シャモニー周辺――フランス＞

一瞬だけ見せた色。まさにこの時間の色は、瞬きをする間に変っていってしまう。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

山で水を見つけるのはうれしいものだ。まさに命の水。水が無くして旅はできない。＜セクステナー／ドロミテ――イタリア＞

百年以上未完成の建造物として有名な聖家族教会だが、昔は何百年も掛けて教会などを建てることも珍しくなかったのだ。百年など、歴史の中では束の間の出来事…＜バルセロナ――スペイン＞

　２００５年６月３０日から、９月２９日の三ヵ月間を掛けたヨーロッパ十ヵ国の旅。

スイス、イタリア、フランス、オーストリア、チェコ、ドイツ、ベルギー、オランダ、スペイン、バチカン市国。

　移動手段は徒歩、電車、バス、ヒッチハイクなど。いつものことながら、宿泊は野宿とキャンプ場がメイン。

これは僕の旅の中でも、「最難の旅」だったと言えるだろう。

　

　海外を徒歩で、しかも野宿やキャンプで旅するとなると、よほどの旅バカか、精神的に「ちょっとイッちゃった」

くらいのタフさがないと難しい。僕はヨーロッパで自分がどんな旅をするのか、どんな旅になるのかさえ全く

分からずに日本を出た。なにしろ参考になる本も、ウェブ情報もなかったのだから、想像がつかなかったのだ。

　

　もっとも旅は、先に何があるのか分からないからこそわくわくできるのだ。自分の今までの旅の経験を信じて、

いつも未知の場所へと進んでいく楽しさは、やがて不安な気持ちなど消し去ってしまうほどに大きな魅力となって、

僕の心を満たしてくれた。